「砂の器」を見る
気に入った映画は繰り返し繰り返し四半期に一度くらいの頻度で見るんですが、この映画もその一本。
- <あの頃映画> 砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]
- SHOCHIKU Co.,Ltd.(SH)(D)
- 2013-01-30
- DVD
この映画というと、武田百合子の「富士日記」の一節を思い出す。
とはいえ手元にないのでうろ思いだし。
”河口湖の名画座にお気に入りの「砂の器」を見に行った百合子さん、途中トイレに立ったついでに売店でおやつを物色していると、売り子のおじさんから、せかされる。
「おねえさん、早く戻らなきゃ。これから丹波哲郎がしゃべるところが始まるから。急いで急いで」”
そうそう。この映画のキモは、「丹波がしゃべるところ」。
原作はまだ読んだことがないんですが、推理物のお話としては、はっきりいって、薄味。犯行は単純だし、トリックもなにもないし、事件の解決も偶然証拠が集まったようなもので、刑事対犯人の知恵比べもない。
でも、丹波がしゃべりだせば全然問題なし。
春夏秋冬、息をのむような日本の景色。その中をとぼとぼ歩む親子。あの音楽。
そこに丹波のMC。(いやまさにマスター・オブ・セレモニーってやつですよあれは)
天才、橋本忍による脚本の勝利ということなんでしょうな。
「複眼の映像」という橋本忍の回想を読んでいたらこんな一節が。
”橋本プロ第一作の「砂の器」は、親子二人が歩く映画で成功。
で、第二作の「八甲田山」では大人数を歩かせた。これも成功。
- 八甲田山 特別愛蔵版 高倉健 主演 DVD2枚組
- 株式会社スバック
- 2014-12-10
- DVD
次の第三作「幻の湖」では、女の子にして、今度は走らせてみたら・・・
大失敗した。”
- 幻の湖[東宝DVD名作セレクション]
- 東宝
- 2015-02-18
- DVD
って、橋本脚本というのは、そんな発想で作られてたんかいな。
天才たる所以ですかな。